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【“ら・し・さ”の終活講座】老後の安心設計は 後見・遺言に替わる家族信託で!

終活講座 第8回

報告

平成27年8月25日の“ら・し・さの終活講座”は、特別講座として『新しい家族信託』と『新しい後見制度』の著者で、家族信託の第一人者である遠藤英嗣弁護士をお招きしました。
白のループタイで颯爽と現れた先生は、とても70歳とは見えないお洒落で粋な、らしさの特別講座にピッタリの方でした。
元検事の要職にあった方が、なぜ家族信託と縁があるのか?興味津々でしたが、最初のお話で疑問が解けました。今から10年ほど前に、『公証人が書いた老後の安心設計』で有名な清水勇男先生の後任として蒲田公証役場の公証人になられ、認知症のある方と多く接する機会が増えたからだそうです。法曹界の人間として、どうしたら認知症のある方の老後に役立てるか信託について勉強したそうです。

信託法の改正があったのが、公証人に任官された平成17年の2年後です。法律改正により「家族信託」が活用できるようになったが、何しろ前例がない。遠藤先生が率先して家族信託を研究し、今日に至ったのです。
家族信託は、大事な財産をしっかり管理して本人や家族のために活用し、かつ、この財産を差し上げたい人に確実に渡すことのできるもの。つまり、財産を「守る」「活かす」「遺す」を一つの法制度で達成できる制度であり、高齢の方や障がいのある方を支援するためにとっておきの制度であるということからスタート。

 

前半は家族信託の基礎知識として、老後の安心設計6点セットとして、①継続的見守り委任契約、②任意の財産管理委任契約、③任意後見契約、④尊厳死宣言を含むいざという時の意思表示、⑤遺言、⑥死後事務委任契約の必要性。そして成年後見制度は、実際は「成年後見」「補佐」「補助」「任意後見」と4つの制度である認識が大事だと教えてくださいました。そして、超高齢社会の今日、①老後の暮らしを守り②本人の死後の家族を守り相続争いを防ぐ、この2つを解決できることが家族信託だと力説なさいました。

遠藤先生は遺言の意義について、つぎのようにおっしゃいました。「遺言者の想いを残すものである。まず、第一は親身になって支えてくれた配偶者や自らを犠牲にしてまで尽くしてくれた人に対して、その恩を遺産を遺すことでお礼をすることである。」
昨年は、遺言公正証書の作成件数が初めて10万件を超えたそうです。また、10年間という長年の公証人時代に感じた相続争いの実態についてもお話してくださいました。

後半は具体的な家族信託の話です。まず、福祉型信託のスキームを紹介し、家族信託の信託関係人について、説明していただきました。信託の基本的な関係人は「委託者」「受託者」「受任者」ですが、福祉型信託を支える受益者を保護するために、「信託管理人」「受益者代理人」あるいは「信託処理代行者」が必要になってきます。
なぜかというと、信託業法という法律があり、免許を受けた信託銀行あるいは信託会社以外の者が業として複数の人から委託されて受託者になる事が難しいからです。したがって、家族の方が受託者になるとしても、たいがいの場合、弁護士、司法書士、行政書士、ファイナンシャル・プランナーなど、法律や会計に明るい人の支援が必要になるからです。
福祉型信託のほかに、実際の活用例として、遺言で作成する信託(信託法上の遺言信託)や遺言を作成しない遺言代用型信託、死後事務委任型信託についても、わかりやすくお話してくださいました。

お話が終わってから、大勢の方と親しく名刺交換をされ、この後、午後と夜も講師をしなくては、とおっしゃってお帰りになられました。

(報告 らしさ理事 高伊 茂)

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