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イベントレポート

本当に役に立つ 終活のはなし

終活アドバイザー協会発足記念講演会報告 2016年9月24日(土)

報告内藤摩利子 (ら・し・さ正会員)

2016年9月24日土曜日、東京ウィメンズプラザホールにて、終活アドバイザー協会発足記念講演会を開催致しました。あいにくの雨にもかかわらず、約100名の方にご参加いただきました。

【挨拶】

まず始めは理事長の若色氏からの挨拶。終活アドバイザー協会発足の経緯と背景についてのお話がありました。「高齢化のスピードや認知症患者の増加など、差し迫った危機感を感じるデータばかりで、終活を前向きに考える人は増えてきている。しかしエンディングノートを書くには、遺言や相続、高齢者施設などの知識が必要であり、リテラシー(理解度)の底上げが図られなければならない。そこで、これまでNPO法人ら・し・さで実施してきたセミナーや見学会で培ったノウハウを社会に還元するために生まれたのが終活アドバイザーの学習カリキュラムである。終活は終末期だけでなく、人生をよりよく生きるための活動で、その一助になれば幸い。」とのことでした。

【第一部 講演】

続いて第一部の講演は「親なきあとのために今からできる!終活」。講師はNPO法人ら・し・さ正会員で、大阪府の障害者福祉施設職員の鹿野佐代子さん。標準語ながらバリバリの大阪モードで、32年に及ぶ障がい者施設での経験談をふんだんに盛り込んだ、支援を必要とする方の親亡きあとの問題と対策についての講演でした。

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知的障がい者の親亡きあとの家族の困りごととして、葬儀の遺影がない、親の生年月日がわからない、通帳での引き落とし方法がわからない、親が名乗っていた名前と戸籍の名前が違うなど、まさかの事態も起こるという事例紹介がありました。また、判断能力に不安のある方にとって、親亡きというもしものことがあった際、相続に関して様々な手続きの困難さがあるとのことでした。

興味深い話のひとつが、鹿野さんが全国各地で行っているセミナーの資料で、遺影のイメージ画が父親の場合と母親の場合で、参加者の反応に違いがあるということです。遺影を父親にした場合は、相続財産をイメージし、母親の場合では、子どもの投薬管理や家計の管理などをイメージする方が多いとのこと。実際に母親が家庭で担っていることを考えると、母親が亡くなった時に、残された障がいのある子が、いかに困るかを想像することができるとのこと。また、親が亡くなった際の相続に関して、相続人をスムーズに確定するためにも、元気なうちに親の原戸籍謄本を取り寄せておくことを勧めていました。

障がいのある方にきょうだい(兄弟姉妹)がいる場合の相続の問題点についても課題が示されました。きょうだい(兄弟姉妹)が後見人になるケースがありますが、いざ相続となると、同じ相続人という立場であるきょうだい(兄弟姉妹)は後見人の役割はできません。そのため家庭裁判所で「特別代理人」を選任してもらう必要があります。家族が後見人になっていれば安心と思いがちですが、そういうものではないということ。判断能力に不安がある子どもが残された場合に、遺産分割協議書に署名や捺印をすることができるのか、不動産を相続し売却することはできるのか、が問題となること。相続を放棄するということを理解できなかったため、期日までに相続放棄の手続きをすることができずに、被相続人の借金を請求されてしまった事例もあったそうです。

親は健常なきょうだい(兄弟姉妹)を含めて、それぞれの子に勝手な想いを抱いていたとしても、きちんと自分の意思を遺さなかったら、財産でもめることになりかねず、その対策として生命保険の活用や、意思を伝える方法として遺言、日記、手紙などを残しておくことが大切であること。特に障がいのある子どもには、音声やDVDなどで語りかける動画を残すと、子どもの安心感につながるという話も印象的でした。『ら・し・さノート』を活用することで、最愛の人にメッセージを残せると話されました。

 

【第二部 パネルディスカッション】

15分ほどの休憩の後、第二部は「これからの社会に求められる終活~その人らしく生きるため準備しておくべきこと~」というテーマでパネルディスカッションが行われました。パネリストは理事長の若色氏、ら・し・さ正会員で終活アドバイザーの濱田眞紀子氏、一部の講演から引き続き鹿野佐代子氏の3人。コーディネーターは副理事長の山田静江氏が務めました。

■自己紹介・困っていることなど

濱田さんは新宿区を中心に、演劇を通じて地域の方々に成年後見制度と市民後見人の必要性を訴える活動をしており、自己紹介と合わせて、地域での問題点として、高齢者が騙される事例が多発している現状、全国の各自治体に地域包括支援センターが設置され高齢者のよろず相談の窓口となっているが、新宿区の場合、相談が増えて24時間体制でやっているが対応に追われていることなどを報告されました。

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鹿野さんへは第一部の講演を受けて、休憩時間に「障がいのある方に後見人をつけることの是非について」の質問がありました。鹿野さんの回答は、「親の会」では、後見人をつけている人はほとんどいないとのこと。後見人をつけない方がいい、という情報が口コミで広がっていくからだそうです。つけた方がいいケースもあるが、逆につけたために身動きがしづらくなるケースもあり、犯罪に巻き込まれることを防ぐためには必要であるが、人生の豊かさとは何か?いうことを考え、時間をかけて判断するべきと話されました。

若色理事長からは、NPO法人市民後見センターちばの理事長も兼任していることから、困っていることとして、市民後見人の人材不足、裁判所との意思の疎通の少なさ、現在の後見制度は身上配慮義務があるが、やはり難しさの最後は財産管理であり、その潜在的ニーズがあることについて話されました。

■自助・互助(注)・共助・公助と終活アドバイザーの役割

「自助・互助・共助・公助」という観点から、公助を期待してもそれが縮小していく将来に向けて、自助が難しい人の支援として、互助としての終活アドバイザーの役割が必要になっていくという話もありました。

濱田さんからは、行政の現状と今後の方向性のお話がありました。財政難から高齢者の増加に見合った手立てがなされず、医療・介護難民や“下流老人”の増加があり、更に団塊の世代が75歳を超える2025年問題が迫っており、医療介護の提供体制が追い付かなくなるのではと心配されること。厚生労働省の推計で2030年には病院のベッド数の圧倒的不足によって「死に場所難民」が約47万人と予想されること。行政の対応としては、地域包括ケアシステムの構築と推進が今、急ピッチで進められてはいるものの、現場からは時期的に間に合うのか?との不安があり、実際、現場では地域包括支援センターへ認知症やごみ屋敷、孤独死などの相談が増え、現在でもその対応に追われており、しかも、相談や通報があっても、その人が誰なのかさえ分からず調査が必要になって多大な時間とコストがかかっていること。その為、自治体によっては独自にエンディングノートを作成し記入を勧めているところがあり、行政としては、終活講座は住民への啓発や効率的なサービスの提供に大変有用であるとの認識で、終活アドバイザー協会の取組みへの期待も寄せられているとのことでした。

(注)これまで「自助」「共助」「公助」の概念でしたが、最近では厚生労働省の地域包括ケア研究会が「互助」の概念を使用し、ボランティア活動や住民組織による支援活動を「互助」の例としてあげています。

若色理事長から、終活アドバイザーは民の力で生まれたもので、その役割は地域コミュニティや施設などでリーダーシップをとり、いわば信頼される民間の民生委員のようになるのではないかということでした。

鹿野さんからは、障がい者をとりまく事情の変化として、30年前は家族に障がい者がいることを隠す人が多かったが、昨今はオープンになっている。施設などが整備されてきているため、障がいのある方の生活も、年金と工賃で暮らせるようになり向上しているというお話がありました。かつてのように行政から与えられるのを待つだけではなく、足りないところを補い、自助、つまり障がい者本人の力をのばす取り組みが大切で、成年後見も含めた制度だけで安心安全をはかるのではなく、コミュニケーションや本人の生きがいをみつけていく対応が必要、ということでした。

■ら・し・さノートの活用と終活アドバイザー講座について

現状の問題点に続いての話題は、解決策としてのら・し・さノートの活用についてです。若色理事長からは、ノートを書くことは残された家族に単に迷惑をかけないためでなく、

子どもや孫に想いや情報を伝えることで心の安らぎとなり、自分自身の人生の更なるスタート「リライフ」につながること、また施設や高齢者住宅へ入居したときの生活や後見人という全く知らない人からお世話になる生活を想像すれば、それに備えて、これまでの生活や嗜好、希望することをノートに書いておくことで、自分を短期間で知ってもらうことの有効性も話されました。

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鹿野さんからは年間60回以上のセミナー経験から、エンディングノートの説明だけでは購入しても行動に移せない人が多い。自分の情報を正しく伝えることの大切さを伝えるとともに、書くところに手を添えて一緒に書くことが大事。その役割を担う人として、終活アドバイザーが必要だというお話でした。

濱田さんからは終活アドバイザー講座について、今まさに終活が必要とされているこの時期に通信講座という手段で多くの方々に提供できるのは画期的だという点や、テキストの内容については、包括的で、しかも大変分かりやすく、短時間で習得が可能な為、どなたにでも学びやすい事、相談業務などでも辞書替わりに使えるとの見解が述べられました。

■これからの終活

これから求められる終活のまとめは、元気なうちに夢を持って生きるため、安心安全に暮らすため、今何をするかを見出し、セミナーなどを聞いただけでなくそれを実行すること。行政任せにせずに、地域で求めていることを実現していくためにも、地域の情報を終活アドバイザーが拾い集め、終活をただのブームに終わらせずに、世の中に定着させ大きな社会的潮流になるようにしていこう、ということでした。

成年後見やセミナーでの豊富な経験から、事例やデータを交えて具体的にお話しいただき、90分という時間を感じさせないくらい、スムーズな進行で、問題点や解決策があらためてよくわかり、とても有意義な時間となりました。

■【資格の説明と事務局紹介】

パネルディスカッションのあと、副理事長の山田さんから終活アドバイザー資格についての説明と、事務局の紹介がありました。

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通信講座のテキストは3冊、全部で27のレッスンで構成されており、そのコンテンツについて紹介されました。講座の内容に続いて事務局の河原さん、高橋さんの紹介と挨拶が行われ、盛会のうちに終了となりました。                               以上

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