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イベントレポート

本当に役に立つ 終活のはなし in 大阪

終活アドバイザー協会講演会 in 大阪

報告佐藤名ゝ美

※無断転載禁止

2017年4月1日土曜日、エルおおさか にて、終活アドバイザー協会講演会を開催致しました。定員を超える約80名のご参加に嬉しい悲鳴でした。

【挨拶】

はじめに、理事長の若色氏より挨拶および終活アドバイザー協会発足の経緯と背景について説明がありました。「高齢化のスピードや認知症患者の増加など、差し迫った危機感を感じるデータばかりで、終活を前向きに考える人は増えてきている。

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しかしエンディングノートを書くには、遺言や相続、高齢者施設などの知識が必要であり、リテラシー(理解度)の底上げが図られなければならない。そこで、これまでNPO法人ら・し・さで実施してきたセミナーや見学会で培ったノウハウを社会に還元するために生まれたのが終活アドバイザーの学習カリキュラムである。終活は終末期だけでなく、人生をよりよく生きるための活動で、その一助になれば幸い。」とのことでした。

 

【第一部 講演】

続いて第一部の講演は、「親なきあとのために今からできる!終活」。講師はNPO法人ら・し・さ正会員で、大阪府の障害者福祉施設職員の鹿野佐代子さん。33年に及ぶ障がい者施設での経験談をふんだんに盛り込み、支援を必要とする方の親亡きあとの問題と対策という重いテーマに対して、鹿野さんのキャラクターが前面に出たパワフルで明るく前向きな講演でした。

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知的障がいのある方の親が亡くなったときの困りごととして、葬式の遺影がない、親の生年月日がわからない、銀行取引きの内容がわからない、親が名乗っていた名前と戸籍の名前が違うなど、思ってもみなかった事態も起こるという事例紹介がありました。また、判断能力に不安のある方にとって、親亡きあとには相続に関する手続きに通常以上の困難さがあるとのことでした。

興味深い話のひとつとして紹介されたのが、遺影のお話しです。鹿野さんが全国各地で行っているセミナーの資料で、遺影のイメージ画が父親の場合と母親の場合で、参加者の反応に違いがあるそうなのです。遺影を父親にした場合は、参加者の皆さんは亡き父の相続財産をイメージし、母親の場合では、子どもの投薬管理や家計の管理などをイメージする方が多いとのこと。実際に母親が家庭で担っていることを考えると、母親が亡くなった時に、残された障がいのある子がいかに困るかを想像することができるという内容に納得しました。そして、実際に親が亡くなると葬送にも困難が生じます。あらかじめ葬儀場を決めておくなど具体的な対策も有効とのこと。さらに、その後の相続に関して、相続人をスムーズに確定するためにも、元気なうちに親の原戸籍謄本を取り寄せておくことを勧めていました。

障がいのある方にきょうだい(兄弟姉妹)がいる場合の相続の問題点についても課題が示されました。きょうだい(兄弟姉妹)が後見人になるケースがありますが、いざ相続となると、同じ相続人という立場であるきょうだい(兄弟姉妹)は後見人の役割はできません。そのため家庭裁判所で「特別代理人」を選任してもらう必要があります。家族が後見人になっていれば安心と思いがちですが、そういうものではないということ。判断能力に不安がある子どもが残された場合に、遺産分割協議書に署名や捺印をすることができるのか、不動産を相続し売却することはできるのか、が問題となること。相続を放棄するということを理解できなかったため、期日までに相続放棄の手続きをすることができずに、被相続人の借金を請求されてしまった事例も紹介されました。

親は、健常なきょうだい(兄弟姉妹)を含めて、それぞれの子に一方的な期待をするかもしれません。しかし、期待するだけできちんと自分の意思を遺さなかったら、財産でもめることになりかねないのです。その対策として生命保険の活用や、意思を伝える方法として遺言、日記、手紙などを残しておくことが大切であること。特に障がいのある子どもには、音声やDVDなどで語りかける動画を残すと、子どもの安心感につながるという話も印象的でした。そして、なによりも『ら・し・さノート』を活用することで、最愛の人にメッセージを残すことができると話されました。

 

 

【第二部 パネルディスカッション】

15分ほどの休憩の後、第二部は「これからの社会に求められる終活~その人らしく生きるため準備しておくべきこと~」というテーマでパネルディスカッションが行われました。パネリストは理事長の若色氏、ら・し・さ正会員で終活アドバイザーの石川智氏、第一部の講演から引き続き鹿野佐代子氏の3人。コーディネーターは副理事長の山田静江氏が務めました。

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■自己紹介・困っていることなど

石川さんは、高知県で『障がいのある人とご家族のライフプランを考える会』の代表として活動をしておられ、ご自身も障がいのある子の親御さんでいらっしゃいます。漫画家やなせたかしさんと同郷とのことで、「アンパンマン列車に乗ってきました」と親しみやすい語り口。「エンディングノートと言えば葬儀屋さん」のイメージだったのは過去の話で、最近は、高知市の男女共同参画課より「地域づくりにつながる、人が集まるテーマ」として終活に関する講演の依頼があるというお話も紹介されました。

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鹿野さんへは第一部の講演を受けて、「障がいのある方に後見人をつけることの是非について」の質問がなされました。鹿野さんは、「皆さん、不要なのでは!?から始まっていい」とキッパリ。大事なのは、内容を十分に理解した上で選択すること。「よくわからないまま…」で後悔する人も多くいるのも事実で、例えば、専門家後見人を付けたら「子供の通帳を一切見ることができなくなった」など実務上の問題を生んでいたりもするそうです。「犯罪に巻き込まれることを防ぐため」など、後見人を付けた方がいいケースもあるが、人生の豊かさとは何か?いうことを考え、じっくり時間をかけて判断するべきと話されました。

若色理事長からは、NPO法人市民後見センターちばの理事長も兼任していることから、困っていることとして、市民後見人の人材不足、裁判所との意思疎通の弱さ、現在の後見制度は身上配慮義務があるが、やはり難しさの最後は財産管理であり、その潜在的ニーズがあることについて話されました。「後見は福祉なのだろうか?ビジネスである人も!?」の言葉にもその重みが伝わってきました。

 

■自助・互助(注)・共助・公助と終活アドバイザーの役割

若色さんから「自助・互助・共助・公助」という観点から、公助があまり期待できないかもしれない将来に向けて、自助が難しい人への支援として、互助が必要となり、終活アドバイザーの資格や知識が役に立つという話もありました。

(注)これまで「自助」「共助」「公助」の概念でしたが、最近では厚生労働省の地域包括ケア研究会が「互助」の概念を使用し、ボランティア活動や住民組織による支援活動を「互助」の例としてあげています。

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石川さんからは、地元が抱える高齢化率の問題が紹介されました。高知県は全国一位の秋田県に続いて高齢化率32%に上るのだそう。若者が田舎の実家を放ったまま家を建てた結果「高齢の父母がひとり」の限界集落が増えており、この動きは全国でもますます加速するであろうことがイメージされました。この人たちを誰がどのようにして支えていくか?が問われます。終活には「楽しく・元気で・寄り添って」というスタイルと「一人でひっそりと」というスタイルの2つがあると石川さんは話されました。「障がい・財産」のあるなしに関係なく、人生の後半期を豊かに過ごすため、エンディングノートの活用が注目されます。

 

鹿野さんからは、“公助”の場に33年携わる中で、福祉も大いに変わってきたことが紹介されました。以前は、入所施設に“措置する”という考え方だったが、時を経て“契約”となり、今では“サービス”となっている。民間賃貸をシェアして住むグループホームなど、地域で生活する仕組みがどんどん良くなっており、自立できる人については、これから一人暮らしも充実していくことが考えられるそうです。行政から与えられるのを待つだけではなく、足りないところを補い、自助、つまり障がい者本人の力をのばす取り組みと、そこに声を上げていくことが大切。ということでした。

 

■ら・し・さノートの活用と終活アドバイザー講座について

現状の問題点に続いての話題は、解決策としてのら・し・さノートの活用についてです。

石川さんからは、ノートを書く意義について、ご自身が6年前にお父様を亡くされた経験を踏まえたお話しがありました。普段からあまりコミュニケーションができていなかったというお父様は、肺炎がもとで2週間という短い時間で旅立ってしまわれたのだそうです。お父様が亡くなられた後で、おば様から渡されたメモには、震える字で「苦しい」と訴える言葉や、精神疾患のあるおじ様への心配が残されていたそうです。この経験から、エンディングノートを書く最大の意義は、自分のことを伝える・まとめること、生きているうちに子どもに知らせること、とおっしゃっていました。書けないところもあるけれど、書ける所から書くことが大事、「頭の中にあることは頭の中にしかない」の言葉が胸を打ちました。

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鹿野さんからは、年間60回以上のセミナー経験から、エンディングノートの説明だけでは購入しても行動に移せない人が多いという現実が紹介されました。自分の情報を正しく伝えることの大切さを伝えるとともに、書くところに手を添えて一緒に書くことが大事。その役割を担う人として、終活アドバイザーが必要だというお話でした。

 

■これからの終活

若色理事長より、これから終活アドバイザーは民間版民生委員のような役割をしていくだろうとの見解が示されました。そして法定後見制度では報酬に市場原理が働かないが、終活全般でお世話になるかたには報酬の支払いということも必要になってくるのではないか。また、成年後見に関する豊富な経験から、法定後見より任意後見をもっと広げていくことや、後見人の養成が必要であることも訴えられました。また、成年後見に関わる人には資産についてのリテラシーを高める必要性があるとの実感から、裁判所の職員はFP資格の取得を目指して欲しいとの具体的な提案もなされました。

 

質疑応答

全体を通しての内容に対して会場から寄せられた質問に、パネリストから回答がなされました。

①ネット関連のIDやパスワードなどはどのように取り扱ったらよいか?

らしさノート41ページを参照してほしい。死後には必要になるが、生きている間に漏れては困る情報。信頼のおける人に託したり、(開けるのに相続手続きが必要な)貸金庫に保管したりという方法が考えられるだろう。(回答:山田さん)

②障がい者自身がやっておくべきことは?

ノートの手順に従って、元気なうちに自分の状態を書いておく。自分の遺影の準備なども必要。(回答:鹿野さん)

③高齢でも加入できる生命保険について教えて下さい。

一般の生命保険会社、少額短期保険会社などいろいろある。持病があっても加入できる商品もある。ただし、健康状態が同様でも保険会社によって取り扱いが異なる。どこかで断られても他で入れることもあるので相談を。このとき、とにかく入れたらいいではなく「何のために入るのか?」も併せて考えることが重要。(回答:石川さん)

④障がいのある子のひとり暮らしを断念しましたが…

親が元気なうちに福祉関係者と懇意にして、親亡きあとはグループホームへ移行することも考えてはどうか。親亡きあとに自宅を売却・賃貸するという方法も考えられる。近くのFPにキャッシュフロー表の作成を依頼してみてはどうか。(回答:若色さん)

 

■終活アドバイザー資格の説明と交流会

 

パネルディスカッションのあと、副理事長の山田さんから終活アドバイザー資格についての説明がありました。通信講座のテキストは3冊、全部で27のレッスンで構成されており、そのコンテンツについて紹介されました。

 

講演会、パネルディスカッションの後は交流会が開催されました。交流会にも約50名の参加があり、盛会のうちに終了となりました。

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